で、市内まで行ってきました
情報が入ったばかりのときはおれもそれなりに動揺したけれど、こういうときに部屋にいても不安になるだけだ。市内まで行って様子を見てくるほうが何かといいだろうと考えて、西単まで行ってきた。
市内は別に平穏だったし、遊び仲間もいつものようにおれと一緒に遊んでくれた。ゲーセンの店長や店員もいつものようにおれの相手をしてくれる。おれのよく知る、おれの大好きな北京には何の変化もない。で、ついでに何人かには明日の集会のことを聞いてみたわけなんだが、一人として知ってる人がいなかったことはここに記しておくべきだろう。
帰りが遅くなったことと雨が降っていることからタクシーを拾って帰ったのだが、今日の運転手はいいやつだった。大学までの道のりも半ばを過ぎたあたりで「お前は留学生か」と聞かれた。瞬間答えに詰まったが、ここでチキっていては流石に沽券に関わる。正直に日本人だと答えた。発音が正しいと誉めてくれるのは素直にうれしいのだが、途中から彼が道が分からないと言い出した。このくらいはよくあることだが、いささか疑心暗鬼になっているおれは以前乗ったタクシーの運転手を思い出した。
あのときは建国門まで学会に通っていたのだが、ある夜乗ったタクシーの運転手がやたらと調子のいい男で、日本人が客だと知ると何かと日本を褒めちぎり始めた。なんだこいつは、と思いながら話をしていたのだが、大学まで戻って清算をすませてからぼられたことに気がついたのである。
要するに、今夜もぼられるのかと思ったわけだ。で、運転手と一緒に「あっちだろう」「いやこっちだ」とかやりながらどうにか大学まで戻ってきたのだが、清算のときにメーターよりも5元少ない値段でいいと言ってくれた。遠回りしたから、というのだ。こんな運転手には今まであったことがない。
そういうわけで、だいぶ落ち着いた。現地に近づかないかぎりどうということはあるまい。そうなるとあとは、現場をのぞいてみたいという好奇心におれが勝てるかどうかが問題だ。