無知をわきまえたからには

勉強でもしますかね、ということで、靖国問題です。おれもそれなりに本とか読んできたつもりだけど、まだまだ半可通にすぎないというそしりは免れないようだ。中国の反日サイトでの書き込みなどにも、それなりに日本を研究して書いてある意見も多いのが実情で、しかしそれらには中途半端な知識に基づいているものが多い。日本の反中気分だって似たようなものだ。知識がゼロなのは論外としても、半可通はもっとたちが悪いはずだ。
前から書いているように、デモの主張はまず日本製品ボイコット、それに常任理事国入り反対とそれに関連する一連の歴史認識問題、それと尖閣諸島(釣魚島)問題なんかがメインだった。その後の中国政府の発表する話は台湾に言及するものが多かったことは以前に触れたけれど、なぜ台湾が出てくるのか、その理由にはだいたい見当がついた。
まずは比較的穏便にまとめられたここを。
靖国神社問題 - Wikipedia
政教分離の観点と、戦犯合祀の問題が挙げられている。おれが問題にするのは当然後者になる。中国との関係において、政教分離が問題になったという話は聞いたことが無い。
まず中国側の主張を簡潔に日本語にしたものとしては、ここがよい。
http://www.taro.org/ml/mailmagazine/index.php?mode=day&log=200412&date=1
日中共同声明の原文は外務省のサイトで見ることができる。これ。
日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明
河野氏が言及している「中国指導者」の「認識」とは具体的にはこの周恩来のスピーチに現れているものだ。
読んでみよう! 周恩来総理のスピーチ [中国語] All About
すなわち、A級戦犯に罪をかぶせる形で成立している日中共同声明、それとそこに含まれた賠償権の放棄といった条項が、A級戦犯を合祀している靖国への参拝とは相容れないということになる。中国政府は靖国参拝の裏に、日本政府が共同声明を廃棄しようという意思を持っているようにみなしているのではないだろうか。そう考えると台湾への執拗な言及も理解できる。共同声明第三項には

中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

とある。ちなみにポツダム宣言はこちら。
http://list.room.ne.jp/~lawtext/1945Potsdam.html
リンク先のカイロ宣言まで見れば分かることだ。日本が日中共同声明を無視するのであれば、それは台湾の領有権を放棄したこれらの宣言をも無視するものに見えるとしても不思議ではない。しかしこれは素朴な疑問なのだが、果たして小泉首相はそこまで考えているのだろうか。考えていないような気がするのだが。
そもそも共同声明にこのような台湾関係の条項が盛り込まれた理由は、当然当時の大陸と台湾をめぐる情勢にある。1971年に台湾の国民党政府が国連での代表権を喪失、同時に台湾は国連を脱退し、大陸の共産党政府が代表権を引き継いだ。このとき日本政府は大陸の代表権確認、および常任理事国議席を与える決議案の共同提案国に名前を連ねていた。ソースはこちら。

日本の一部では、台湾ならともかく大陸にあれこれ言われる筋合いは無いとか言ってる人がいるようだが、これを見る限り大陸にあれこれ言われても仕方ないのではないか。もっとも、この提案が直ちに台湾からの代表権を剥奪することを意味するわけではないところがまた微妙な内容だ。
結局、A級戦犯を合祀するまでは、靖国参拝は現在参拝擁護論者が言うように日本の内政問題に過ぎなかったのに、わざわざ外交問題に発展するような火種を進んで抱え込んだということか。A級戦犯の合祀は靖国側も当初は慎重だったようだが、宮司が交代してから方針が一変したようだ。ここの一番下にある記事を参照。
http://www2.big.or.jp/~yabuki/doc01-8/yasukuni.htm
なお、昭和天皇は数年に一度のペースで参拝していたが、1975年以降参拝することは無くなり、勅使を派遣するだけになった。このことと戦犯合祀にどれほどの関係があるのかは不明。天皇が必ず参加する終戦記念日の追悼式には戦犯の遺族も招待されているというから、昭和天皇が参拝しなくなったことと合祀は無関係なのかもしれないけれど、今のところおれには何とも言えない。参考までに、こちらを紹介しておく。リンク先の読売の論説とあわせて読んでみることをお勧めする。
http://deadletter.hmc5.com/blog/archives/000090.html
個人的には、A級戦犯分祀するのが一番簡単だと思う。平凡な結論だが、一番手間がかからない上に効果は大きいはずだ。靖国側が受け入れないだろうと言われているけれど。
しかし靖国というのは不思議なところだ。「神社界全体」とかいってる割には神社本庁に属していないとか、わけが分からない。