とりあえず一つ片付いた

授業が一つ終わった。普通の学生はこのあと試験に備えるわけだが、おれはテストなど関係ない。残りの授業もまもなく終わるだろう。一年なんて本当に短いものだ。
今日の授業は午後からで、食事が終わった学生はぽつぽつと教室の近くに集まって老師が教室の鍵を持って現れるのを待つわけだが、中国人学生は基本的に空いている別の部屋でおしゃべりしている。おれも含めて、同じ授業に出ている留学生はたいてい別の場所にいて授業の開始を待つ。おれと一人の韓国人は喫煙者のため教室に入らない口実があるとも言えるが、おれがそれを言い訳にしていなかった証拠はない。そしておれたちがタバコを吸っていれば自然と両国の留学生が寄ってきてしまう。最大の問題はやはり語学なのだ。
今日はたまたま資料を整理しなければならず、空き部屋でおしゃべりしている中国人学生にまじって座っていたのだが、やはり雑談のヒアリングが一番厳しい。あらかじめ内容が予測できる授業と違い、どんな内容がでてきてもおかしくない状況で十全に意思の疎通ができるほどの語学力はおれにはない。今ならば理解できる部分も増えたから気楽なものだが、以前ならそんな中に座っている度胸はなかったし、彼ら中国人学生たちが気を使ってくれるのが分かったりするとなおさらいたたまれない気分になっていたことだろう。
今は昔のおれじゃない、と思えるようになったころには授業が終わる。例外はあるにせよ、彼らと授業で会う機会は今後基本的にない。彼らとの関係そのものがなくなるわけではないけれど、何気なく一緒にいる、という貴重な時間を活かしきれなったのではないかという悔いは残る。