飲み会ばかり

学期が終わるということは留学生にとっては帰国が近づいているということで、最近何かとあわただしい。話題にのぼることがらも、飛行機のチケット、荷物の運送費といったものが目立つようになった。個人的にはもう一年や二年いてもいいくらいな気分なのだが、現実的にはそういうわけにもいかない。逆に、居心地が良すぎて腑抜けになるという言い方もできるだろう。
そういえばある中国人の友人から「来年あたりには台湾との間に何か起こるだろうから、お前は今年で帰れてよかったな」と言われたことがある。本当か嘘かは確かめようもないが、まあ一つの噂である。
話を飲み会に戻すと、先日一緒に飲んだ中国人の院生は食事もある程度進んだところで「あらゆる日本人は死ぬと神になるのですか?」と聞いてきた。やれやれ、と思いながら知っている限りの知識と語学力を総動員して、生前に権力者だったとか死後の祟りが強烈だとか、何か特別な理由がない限り普通は神にならなかったと答えておいたのだけれど、ひとしきりそうした最近の日中関係を話した後、彼は「中日の対立の裏にはアメリカがいる」と言い出した。中国ではけっこうポピュラーな見方だとは聞いていたけれど、実際に、しかも身近な高学歴者から聞くとそれなりにインパクトがある。無論、彼はおれたち(その席にはもう一人日本人がいた)に気を使って、一般論を引き合いに出すことで話題を無難な方向に持っていったにすぎなくて、本人はそんな陰謀論みたいな話を信用していないという可能性もあるけれど、そういった彼の内心の動きまではちょっと読みきれなかった。意外と本気だったりしたらどうしようか。
前にポリティカル・コンパスを眺めていたときに、あれの経済の軸を反米・親米の軸にしたらけっこう面白いんじゃないかと思ったことがあるけれど、中国人から見ると基本的に日本の右翼はアメリカ寄りのものに見えるようだ。東京裁判憲法をめぐる日本人の屈折した感情なんかはけっこう見落とされてるのかもしれない。