レスです

提督氏は火曜日にここにいらっしゃるようですね。
ある国民の性質が民主主義に適合するか否かなどという話もおれにはよくわかりません。中国の反日的言説にもよく素質の話が出てきますが、そもそもおれは一国民全てに共通する素質とか性質なんてものは、およそ曖昧な印象に過ぎないということが言いたかったわけです。それはおれと提督氏の食い違いからも明らかでしょう。中国であれ日本であれ他のいずれの国家であれ、ある程度の全体的印象は述べることができたとしても、それに対する反証はすぐに見つかることでしょう。そもそもおれは中国人の性質とか素質といったものを論じたのではなく、民主化すれば中国は日本並みになると主張したわけでもなく、中華思想の根拠が賄賂というのは疑問があるということを述べたに過ぎません。
分祀不可能については、何度も引いて恐縮ですが、おれは4月25日の日記で分祀靖国側が受け入れないであろうと記しておいたはずです。位牌は無くて名簿があることは承知しています。神社本庁分祀は不可能と言っているようですが、両者が主張しているのは、前例が無いということに過ぎません。明治生まれで、それ以前の神道との関連も不明瞭な靖国について前例とか言われても、というのが正直なところです。靖国は近代以前の神道とどれだけ連続しているのかという点はおれには未だによく理解できないですね。
少し話が逸れますが、これは以前からの疑問なので。例えばおれが読んだことのある前近代の神道家は、皆記紀神話の研究を行い、彼らが自説を述べることも基本的にそれら神話の注釈書を著すことを通してなされる場合がほとんどです。仏教や儒教の助けを借りるものもそうでないものも、また古事記日本書紀のいずれに重点を置くかという違いはあるにせよ、記紀だけは放棄していなかった。そうした神話中の神を祭神とするというのは理解できます。それとは別に人間を祀る場合については、死んだ一人の人間が一つの神格になるということは以前からありますが、死んだ複数の人間が一つの神格になるという話は聞いたことがありません。これは祭祀者の資格を問題にする文脈で出てくる議論ですから厳密には話が違うのですが、日本人はすべて神の子孫であって同一の気の流れに属するという説は江戸時代に確かにあります。これを応用すればある程度合祀は説明できますが、しかしそうなると今度は靖国が賊軍を祀らないことや韓国、台湾などの戦没者を祀っていることと矛盾します。靖国が全面的に前近代と連続していなければならない理由はありませんが、前近代のものとの連続性が認められないものが、前例が無いことを楯にするのは今のおれに対して説得力がありません。新しいものに前例が無いのは当然です。これは皮肉ではなく本当に知りたいことで、ご存知の方がいれば是非ご教示願いたいのですが、靖国の立場は神道の古典で説明可能なものなんでしょうか。大国隆正でも読めば出てくるのでしょうか。
提督氏は、戦犯だけにとどまらず国民全てに戦争責任を認めて、なおかつ国交交渉をやり直すべきであり、その交渉の過程で想定される不利益も克服可能とお考えということでよろしいでしょうか。それなら以前書いたように、一つの考え方ではあるでしょうが、不利益克服可能な根拠が裏取引というのは心もとない限りですし、おれには現在の国交が白紙に戻さねばならないほどに欺瞞に満ちた深刻な関係だとは思えませんけれど。むしろ、関係悪化に拍車がかかっているのはつい最近のことだと思います。これは日本政府の否定にも関わらず、中国政府が常任理事国の件と関連させて歴史問題を考えるからでもあるわけですが、これについてはおれよりも詳しいサイトがあるのでこちらをどうぞ。
http://kangbuk.g.hatena.ne.jp/Jonah/20050518/p2
http://kangbuk.g.hatena.ne.jp/Jonah/20050613
首相の考えはおれと提督氏のいずれとも違う点があるようです。説明して理解してもらえれば問題は無くなるというのが基本方針のようですし、公式参拝を問題の核心とは思っていないと言っています。かといって東京裁判の結果に異論はないようだし、中国との国交交渉をやり直す気があるという話も聞いたことがありません。最近首相が強調するのは日本の自主性のようですが、その一方で中国政府の言い分を内政干渉だとは思っていないという。おれには首相の考えがよくわからないですね。今のところ首相の打つ手はあまりうまくいっていないようにしか見えません。