長城を初めて見たのだけど

綱渡り。黒い点が人間。

それは目的地が長城だったわけではなくて、昨日行った龍慶峡が長城よりも先にあったからに過ぎない。

朝九時に某所で待ち合わせ。目的地の龍慶峡(北京の桂林と呼ばれているらしい)へはチャーターしたワゴンで向う。

だいたい遊び仲間が固まってきた感がある。普段は日本人同士で固まってる連中を見ると虫酸が走るのだが、自分の語学力に不安のある現在では、どうしても単独行動には制約がある。そのために、自分よりも留学経験の深い知人に頼る機会が増えていく。いささか気合が足りないのではと反省しないわけでもないのだが、自分で車の手配ができるかと問われれば自信はない。やってみればたいしたことは無いのかも知れないのだけど。

北京を囲む環状線を抜けると山並みが見えてくる。北京市内からはほとんど山が見えない。これも中国の大きさを感じさせる一因であるのだが、その山並みに城壁を見つけたときはいささか興奮した。ついに長城とご対面である。しかし、かの有名な居庸関も今日は素通り。後日必ず見に来ることを誓う。

現地に着いたのは11時くらい。チケット85元はいささか高いようにも感じたが、ともあれ中に入る。正面にはダムがあり、水しぶきが飛んでくる。脇にあるエスカレーターに乗ってダムの向こう側へと抜けると、切り立った岩山がいくつもそびえている。その岸壁には赤い「龍慶峡」の文字。江澤民の筆らしいが、景観を損ねていることは疑う余地がない。それでも、岩山に生い茂る草木とダム湖に湛えられた水を見ると、平坦で、乾燥して、埃っぽい北京市内では絶対に得られない気持ちになる。

まず遊覧船に乗る。観光客はなかなかの数で、船は満席になるのを待って出発した。国慶節中のニュースには観光地での事故が多いことを思い出していささか不安も覚えるが、気にしていてもどうなるものでもない。乗ってしまえば、久しぶりにきれいな水の上に居るという感覚が余計な不安を忘れさせてくれた。

ところが、遊覧コースも半ばを過ぎたあたりで、湖の上に張り出した奇妙な足場が目についた。同行した知人に尋ねると、バンジージャンプの台だと教えられた。さらに前進すると、頭上はるか上、岩山と岩山の間に張られたロープの上で綱渡りをやっている。これが尋常な高さではない。さすが中国である。景勝地でこんな真似をしなくてもよさそうなものを。

船を下りて陸地に上がる。正面の階段を登り、まずは金剛寺という寺院に向う。創建は遼代というから歴史はあるのだが、いかんせん90年代に修復された寺でもあり、まったく面白みのない寺であった。階段を戻って行くと、道が分かれている。ここから山に登れるらしい。知人が「登りたいのか」と聞いてきたので調子に乗って「行きましょう!」などと答えてしまった。ここからが大変だった。

そもそも、山登りなど去年の高尾山以来だし、この展開を予想していなかったので水すら持っていない。おまけにおれは去年からいささか体力に自信を失っている。どうなることかと思ったが、体は思ったよりずっと動いてくれて一安心。しかし、道の傾斜がきついために疲労がすぐにたまる。誰かが所々に砂利を撒いてくれたせいで足場の安定も悪い。とはいえ自分の軽はずみな発言のせいでこうなったので文句を言うわけにもいかない。黙々と登りつづける。同行した韓国人は兵役経験者だけあって、さすがに強靭な肉体ぶりを発揮してすいすいと登っていく。

どうにか頂上まで登る。登ってしまえば当然気分はいいが、遠くにもっと高い岩山と、その頂上の建造物が眼に入った。さすがにそんな体力は無く、小休止の後下山。下りきったときには膝が笑い始めていた。