久しぶりに

大学の外まで出た。今日は気温もだいぶあがって過ごしやすい。おれが最近引きこもりがちなのは風邪のせいでもあるが、一人暮らしになってしまったことも大きい。前は部屋にいるのがいやだったから半ば強制的に外出してたけど、今は部屋が快適になってしまった。これはこれで問題だ。
今日バスに乗っていたときのことを。車内は例によってたいそうな混み具合で、朝の山の手線にはちょっと及ばないというくらい。とあるバス停を過ぎたところで一人の客が騒ぎ始めた。さっきのバス停で降りるはずだったのに、なんで教えてくれなかったのだと文句を言い始めたのだ。確かに、車掌の乗っているバスだったからもしも男の言っていることが事実なら問題だったが、おれは車掌がきちんとバス停の名前をコールしていたのを聞いている。おおかた彼がぼうっとしてたのだろう。それでも男は「おれは地下鉄に乗るんだ」「すぐ停車してくれ」とか無理を言い出した。
気の毒なのは車掌のほうで、まだ二十代とおぼしき女の子の車掌は「こんなにたくさん客が乗ってれば後ろのほうなんてわかんないわよ」とか怒鳴り返してなかなか気丈なところを見せていたが、泣きそうな顔をしていた。言い争いはしばらく続いたが、たまりかねた一人の客が仲裁に入って男をなだめ、ようやく終結。それからしばらく、次のバス停がコールされると、降りる予定の客は込み合った車内を進んで出口近くで到着を待つようになった。いつもよりもみな献身的なのがおかしい。いかに自己主張の強い人々とはいえ、あの男には普通の中国人もうんざりした様子だった。
学校に戻るときには久しぶりにLWの車で送ってもらう。彼が「いずれ暇があったら銭湯に行こう」という。まさかと思って小姐の居るところかと尋ねると全否定していたが、ではなぜ銭湯なのか。おれは何を期待されているのだろうか。五階建てのビルの全てのフロアが風呂というすごいところらしいが、さてどうしたものか。まだ返答はしていない。