今日も学校の中

遠くまで旅行に行きたいけれど、そうすると勉強ができない。そりゃ旅先でも中国語は必須だし、歴史と文化に触れるとかなんとか自分をごまかすことは不可能じゃないが、かといって文献漁ったりすることはできないに決まってる。やっぱり一年は短いよなぁ。
そんなわけで学校にいるのだけれど、今日も学食でおまけしてもらえたのでうれしい。こっちの人間はすぐに顔を覚えてくれるし、記憶力はみな良いように思える。以前自転車で買い物に行ったとき、こっちには自転車置き場に管理人がいて金(ごくわずかだが)を取るのだが、そこに自転車を停めて買い物を済ませて戻ってくると、「お前の自転車はあっちだ」と言って正確におれを案内してくれた。まさか、客の顔とその客の自転車を完璧に把握しているとは予想していなかった。
まあ学食にはもう半年も通っているからちょっと事情が違うけれど、似たようなことは違う場所でもしばしば経験した。で、覚えてもらうと何かと話しかけられたり、今日のようにおまけをしてくれたりする。中国では何をするにもコネが強力な武器になるが、それはこうした点とも関係しているのだろう。知り合いがいるかいないかだけで、できることが大幅に変わってくる。列車の切符、図書館での貴重書の閲覧、病院の予約、なんでもそうだ。良くも悪くも情に篤い。コネがあったほうがやりやすいのは世界共通だろうけど、私情以外の部分、それは法とか倫理とかになるのだろうが、中国はその点がいささか希薄なように思える。後ろめたさが無いというか。
でも本当は、希薄などと言って切って捨ててしまってはいけなくて、なんらかの行動規範は確実にあるはずであり、それが法とか倫理という語彙では説明できないだけなのだが、そこのところはおれにはまだ理解できない。「公私」みたいなカテゴリーは文献に頻出しているし、そうした発想が中国に皆無なわけでは断じてない。実際に中国で暮らしているときに感じるのは上記の通りで間違いないのだが、そこから先がまだ見えない。