Chinaの車窓から 南京篇(2)

夜の夫子廟。

29日。ホテルで朝食の後、だべったり、日本の保険会社と連絡を取ったりしていたら10時近くになってしまう。フロントで最も近い公安の場所を聞いてから出発。わりと近そうだったことと、前日夫子廟から帰るときに乗ったタクシーが予想よりも高くついたことから、歩きで現地へと向かう。しかしどういうわけか全く見つからない。教えてもらった場所の近くで人に尋ねてみても一向にわからない。仕方が無いので先に駅に行く事にした。上海へ行く切符をまだ買っていなかったからだ。さすがに駅まで歩くのは面倒なのでタクシーを使う。
駅の近くは工事のせいで渋滞しているので少し離れたところで下ろされたが、途中で公安を見つけられたのは却って好都合だった。事情の説明にいささか手間取ったが、無事に証明書らしきものを書いてもらうことに成功した。この時点でだいたい昼くらいだったので、まず切符を買ってから駅近くの屋台で食事。その後一度ホテルに戻って、さっきの公安に電話をかけ、盗まれたデジカメの形式を伝え、それからようやく観光に出発できた。本来ならこの日は明孝陵にいくつもりでいたのだが、もはやそんな時間はない。したがって昨日素通りしてきた夫子廟に向かうことにした。
それなりに立派な廟ではあるのだが、孔子と弟子の石像があったりして完全に観光地化しているのが気に食わない。おまけに、本来は碑廊になっていていくつもの石碑が壁に埋め込まれている通路には、丁度いい高さにショーケースがあって後ろの碑が見えなくなっている。期待はずれだったと言うしかないのだが、それを言う資格がおれにあるのかどうかは微妙なところだ。なぜなら、この廟も日本軍に破壊されたものを再建したものだからだ。
ついで隣にある江南貢院へ。かつては巨大な科挙の試験場だったところだが、しかしここも単なる小さな博物館になってしまっていて、それほど興味を引かない。この辺りでの観光は全体的にあまり面白くなかった。
この日最後に見たのは瞻園という庭園で、太平天国歴史博物館と庭園がセットになっている。しかしおれたちが行った時には、時間が遅かったせいで博物館には入れずじまい。庭園だけを見て回った。ここは入場料がまあまあ高かったのだが、そのせいか頼んでもいないのにガイドがついた。若い女の子のガイドは本来なら大歓迎なのだが、今のおれの実力ではガイドのしゃべりはきついし、おまけに同行の友人にはさらに意味が無い。結局おれにできたのは適当に相槌を打ちながら分かる範囲で相手をすることだけだった。そしてこのガイドもまたおれに「韓国人ですか?」と尋ねてきた。おれは、今度はわずかのためらいも無く「そうだ」と答えた。これが、この後問題化したのである。
こうしてこの日の観光は終了。外で食事をとるという手もあったのだが、結局ホテルに戻って昨日と同じレストランへ。小姐たちがひそひそと「中国語をしゃべる日本人が来てるの」とかしゃべっている。どうも珍しがられているようだ。食事中からなんとなく議論というよりは口論に近い話をしていたような気もするが、この時点での話題はそうたいしたものではなかったような気がする。本当に議論になったのは、食事後に部屋に戻ってからだった。