Chinaの車窓から 天津篇(4)

25日。午後五時くらいの列車に乗って天津に向かう。周囲の中国人客が望むままに座席を交換していたら窓際に座れた。中国に来てからは電車の中で本を読まなくなった。本よりも周囲の景色を見ていたいからだ。三回目でも窓外の景色に飽きることが無いのは、いつ見ても何かしらの変化があるからだろう。向かいの座席の若い夫婦が新築のマンションを見ながら「ここじゃ買い物に不便だ」とかしゃべっている。おれはおれで、外を眺めながら到着を待つ。
一時間半ほどで天津に着く。友人は時間帯を考慮してバスを勧めてきたが、おれはタクシーを拾ってしまった。見覚えのある町並みを過ぎて、20分ほどで彼女の大学に着く。まず宿となる寮にチェックインを済ませる。この時点で従業員がしきりにいぶかしんでいるので何事かと思っていたら、どうやらかなり高級な部屋を、嘘のような安さでとれたようだ。部屋の鍵を受け取りに行ったら従業員が騒ぎ始めた。「あんた、何かつてがあったのかい」と聞かれたが、当然そんな立派なコネは無い。彼女が予約を入れるときにたまたま当たった従業員が偉い人だったようだ。通常の五分の一くらいの値段だと聞いてさすがにおれも驚いた。面白がって従業員が部屋までついてきた。なるほど、リビングと寝室、バルコニーまで付いている。おれ一人で泊まるには不必要なくらいで、今までこんな部屋には泊まったことが無い。ついてきた従業員が「すごいだろう!」と言いながら部屋の解説をしてくれる。
まず友人の部屋で彼女が用意してくれた食事を食べる。日本の米を食べたのはいつ以来だろう。おれは基本的に中華料理に不満はないが、米だけは日本のものが恋しくなる。彼女の住環境は、六階まで歩かなくてはいけないことを差し引いてもおれよりはるかに良い環境なのでうらやましい。ひとしきりだべってからおれは自分の部屋に戻った。
ところが、いざ風呂に入ろうとするとお湯の出が異常に悪い。これだけ立派な外見でも結局こうなるのかとうんざりするが、時間が遅いので交渉してもどうにもなるまいと諦める。どうにか入浴を済ませた後、テレビでやっていたワールドカップの予選を見てから眠った。